彼はロック表現の唯一真っ当な最新形なのだ。
七尾旅人


国府達矢を聴いた後、自分は大半の宝物やレコードを捨てる事が出来ます。
それらではもう、物足りなくなるからです。
国府達矢の音楽を聴いていると ここ数年(もしかすると数百年)の間
世界中の音楽家がいかに迷走を続けて来たか解ります。
そして音楽が終わるどころかまだまだ始まったばかりである事や
私達の中がこれまでの想像以上に豊穣である事も解ります。
音楽の非常に重要な役割の一つが、明らかになるのです。
迷走から瞑想へ。
一人の雲水が誘います。
本物の極楽浄土を鳴らす事が出来るポップミュージシャンは
今のところ地球上で国府達矢だけです。


本当に、奇跡のような一枚です。
いかなるエクスキューズとも無縁のやり方で、
ただただ耳を澄ませるしかありません。
まどろみと覚醒。
愛と歓喜と透徹のパルス。
祈り。
天上の琴の調べのように国府達矢のギターはひらめき沈みこみ
輪を描いては舞い上がりあなたの背中を後押しするでしょう。
包み込み、決して裏切る事がないでしょう。
素晴らしいメンバーがその息吹を見事に聴き分けて、支えています。
まったく愛と同じ形をした音楽。
愛ほど熱心に音楽化されて来たものを他にあまり知りませんが
国府達矢を聴いた後では音楽史上の名だたる天才達さえ皆
少し力及ばずだったのではと思わずに居られません。


天国、いえ、極楽浄土からも国府達矢の音楽なら耳にする事は
容易なはずで(だから僕は、仮に明日バッタリ死んでしまっても
国府達矢の推薦文を未来永劫書き続けることが出来るのだよ!
地獄に落ちなければだけど。)例えば、
ジョン・コルトレーン、
マーヴィン・ゲイ、
ジミ・ヘンドリックス、
エリック・ドルフィー、
カート・コバーン
綺羅星のような彼等にも是非国府達矢の音楽を聴かせてみたい!
彼等の終わらない痛みを、胸のつかえを、
誰よりも綺麗に取り払ってゆくのは国府達矢ではないか?
僕はそんなふうに思ったりします。
『音楽の最先端』はスノッブやマニアの手慰み物ではない。
スタイルでもない、流行りのテクスチュアでもない、
これから何万年音楽と人類が生き長らえようと、
やっぱり音楽の根っこはスピリチュアリティなんだ。
あらゆる全ての人が、(僕も君もだよ。)
あらゆる全てが、あまりに美しく音楽である事を、国府達矢が証明するよ。
彼はロック表現の唯一真っ当な最新形なのだ。


国府達矢は純粋さや不器用さや正直さや愛の深さのせいで、
世間一般の価値観からすると随分損をして来た。
(少年漫画の主人公を彷佛とさせる、世にも珍しい男なのだ!)
しかしそのせいで現在の国府達矢は堂々の、世界一である。


転生。ロック転生。
ロックによって転生を成し
同時にロックそのものをも見事な手つきで転生せしめた国府達矢。
不死鳥か? 
ロック転生、奇跡の円盤。
国府達矢、奇跡の音楽家。
これはほとんどリトマス試験紙の様なものだ。
21世紀初頭この荒廃した音楽状況、精神状況にあって
誰かがまだ奇跡を必要としているのかどうか、
嗅ぎ分ける鼻と、聴き当てる耳を持っているのか、
僕は国府達矢のそばで、その景色を共に見ようと思う。

天上歌手
天上桟敷首領
うたの復興盟主
七尾旅人

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